佐々木 丈予
佐々木 丈予(ささき じょうよ:応用心理学部 健康・スポーツ心理学科)
主な担当授業:メンタルトレーニング論・特講・演習、モチベーションマネジメント
専門:心理的プレッシャー下におけるアスリートのパフォーマンス、メンタルトレーニング、メンタルサポート
主な担当授業:メンタルトレーニング論・特講・演習、モチベーションマネジメント
専門:心理的プレッシャー下におけるアスリートのパフォーマンス、メンタルトレーニング、メンタルサポート
プレッシャー下のアスリートと「ちゃんとやりたい」
プレッシャーがかかると?
競技場面のアスリートは、プレッシャーと戦っています。一般的に、 プレッシャーがかかると、 心や体において様々な変化が起こります。例えば、 「失敗したらどうしよう」などといったネガティブな思考が生じやすくなったり、 心拍数が上がってドキドキしたりします。そして、 動きも縮こまったり、 ぎこちなくなったりして、 思うようなプレーができなくなります。なぜ、 大切な場面に限ってパフォーマンス発揮を邪魔するようなことが起こってしまうのでしょうか。その理由のひとつとして, 私たちの中にある「ちゃんとやりたい」という心情が悪さをしていることが指摘されています。
内的注意と外的注意
プレッシャー下で生じる「ちゃんとやりたい」という気持ちは、 プレー時の注意(意識)の向け方に現れます。運動パフォーマンスを行なう際の注意の向け方には、 大きく分けて、 内的注意と外的注意の2種類があります。内的注意というのは、 プレーを行なう身体部位を注意の対象とすることで、 一方の外的注意はターゲットなどの外的なものを注意の対象とすることです。そして、 プレッシャー下において「ちゃんとやりたい」と思うと、 動きを正確にコントロールしたいという気持ちから、 内的注意が使われ過ぎてしまうようになることが分かっています。アスリートの動作というのは、長い年月の中で自動化(意識を向けなくてもできる状態)されているものですので、 プレッシャー下でこのような注意の向け方をすることは、 いつもと違うことをしてしまうことを意味します。最終的には, かえって動きがぎこちなくなってしまうという皮肉な結果を招いてしまいます。ちなみに、 自動化された動きには、 外的注意の方が向いていることがわかっています。
「余計なことを意識せず、ただやる」の大切さ
極限状態での「開き直り」
「ちゃんとやりたい」と思うことでプレーが上手くいかなくなってしまうとしたら、 「ここぞ」という時、 どうしたらいいのでしょうか。この問題については、オリンピックや世界選手権といった最高峰の舞台でメダルを獲得したようなトップアスリートにインタビューすると、 口々に「開き直る」ことの重要性に言及しています。開き直るというと、 「諦めて適当にやる」のようなネガティブな印象を受けるかもしれませんが、 それとは違います。彼/彼女らが言うのは、 練習やトレーニングの場面で異次元に「ちゃんと」やることで、 揺るぎない自信をつけ、本番ではやってきたことを信じて開き直る、ということです。そして、 開き直った時には、 小手先の動きをコントロールしようなどという気持ちは生まれず、 達成すべき目標を見据えることになります。
モードを切り替える
私たちは、「ちゃんとやりたい」と思うと、 様々な活動で「十分な計画をして, 確認をしながら、 丁寧に進める」ということをやりたくなります。それ自体はとても大切なことですが、その一方で、 スポーツのような身体を使う活動では、 「余計なことを意識せず, ただやる」という心構えも必要になります。この2つのモードを育み、 使い分けられるようになることが、 プレッシャーの下で自己実現していくために大切なことになるのです。