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根津 克己


根津 克己(ねづ かつみ:応用心理学部 臨床心理学科)
主な担当授業:臨床心理学概論、心理療法特論
専門:認知行動療法、メタ認知

グルグル思考と気分の落ち込み

グルグル思考の深みにはまる

いやなことがあれば、誰しもそのできごとの内容や原因、その時の気持ちや自分自身のことについて、繰り返し考えてしまいます。「あのときこうしていればよかった」とか、「どうして自分はいつもなどなど。こうした過去のできごとに対して、あとになっていろいろと頭の中でグルグル考えてしまう現象を「認知的反すう」と言います。
この認知的反すう(ここではわかりやすく「グルグル思考」とします)は、実は落ち込んだ気持ちを長続きさせてしまったり、落ち込みをより深くさせてしまったりする効果があります。いやなことをずっとグルグル考え続け、どんどん深みにはまってしまう訳です。

グルグル思考と「メタ認知」

なぜ人はこのようなグルグル思考を行ってしまうのでしょうか? 最近の研究では、グルグル思考などの認知的機能(ここでは頭の中で行われる様々な作業と考えてください)に対する、「メタ認知」の役割が注目されています。メタ認知とは、「自分の認知を認知すること」を指します。もう少し簡単に言うと、「自分が何を知っているかを知ること」「自分がどう考えている、感じているかを知ること」を言います。今回の例では、グルグル思考が認知、グルグル思考について気づき、それをどう捉えるかがメタ認知になります。
落ち込みが長続きしやすい人のメタ認知には、次のような特徴があります。ひとつ目は、そもそもメタ認知があまり上手ではないこと。グルグル思考に気づけずに、いつの間にか自動的にグルグルを始めてしまい、落ち込みを長引かせてしまいます。もうひとつは「メタ認知的信念」と呼ばれるものに特徴があります。これは自分の認知的機能について、それがどんな意味や機能があると考えるかという、自分の認知に対する考え方を言います。

グルグル思考とどう付き合う?

グルグル思考に陥りやすい人のメタ認知的信念

グルグル思考に陥りやすい人が、グルグル考えることにどんな意味を感じているかという、グルグル思考へのメタ認知的信念の特徴を2つ挙げてみます。
①グルグル思考は役に立つ: グルグル考えることは今後の問題の解決に役に立つと考えたり、自分自身の成長につながると考えたりする傾向があります。
②グルグル思考はやらなくてはならないもの:グルグル思考をやらないと反省したことにならない、グルグル考えないと問題の理解ができないなど、やらなくてはならないものと考える傾向があります。
つまりグルグル思考にはメリットがある、デメリットを避けられる効果があるというメタ認知的信念を持っています。しかしグルグル思考、特に性格など自分自身ついてのグルグル思考は、問題の解決や成長には、たいていはつながりません。良いことだと信じて行っているグルグル思考が、実は気分の落ち込みを長引かせているだけという、皮肉な結果になっているわけです。

グルグル思考とどう付き合う?

さて、それでは気分の落ち込みを軽くし、長引かせないためにはどうしたらよいか、メタ認知の観点から考えてみましょう。まずはメタ認知能力を高めることが大切です。メタ認知の能力が充分でないと、自分がグルグル思考をやっていることに気づけず、どんどん落ち込みを悪化させてしまいます。自分が今何を考え、何を感じているのかを客観的に観察する眼を普段から養うことが大切です。それができたら自分の「メタ認知的信念」がどのようなものかチェックしてみましょう。グルグル思考に気づいたら、そのグルグル思考は何のためにやっているのか、そして本当にその通りの効果があるのか、それともただ落ち込みを強くさせるだけなのか、これも客観的に観察し、検討する練習をしてみましょう。
人は生きていれば必ず落ち込むようなできごとに出会います。しかしそのときにグルグル思考を繰り返し、落ち込みをひどくさせるか、グルグル思考に気づいてそれを止め、ほどほどの落ち込みで済ませるかは、選ぶことができます。まずは自分のグルグル思考の傾向、グルグル思考についてのメタ認知的信念に気づくことから始めてみましょう。
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