石隈 利紀
石隈 利紀(いしくま としのり:応用心理学部 臨床心理学科)
主な担当授業:心理学概説、心理学英語基礎、カウンセリング心理学専門:学校心理学、多文化間心理学
主な担当授業:心理学概説、心理学英語基礎、カウンセリング心理学専門:学校心理学、多文化間心理学
寅さん・ハマちゃん・右京さんの「つながる力」
寅さん・・・100人に100の顔でつながる
「ナンバーワンよりオンリーワン」という言葉を私は好きです。でも一人ひとりは、心も体もまったく違うのですから、オンリーワンになるよう特別にがんばらなくていいのです。大事なことは、一人ひとりがどうつながるかです。つまり 「人とつながるオンリーワン」です。まず映画『男はつらいよ』の「フーテンの寅さん」(渥美清さん)です。ご存じですか。寅さんは、テキヤ(露天商)稼業で全国を旅しながら、多くの人に出会います。寅さんは、出会う相手の一人ひとりの心や文化を理解し、相手の世界に染まろうとします。寅さんは、「100人に対して100の顔をもつ」人なのです。相手の気持ちや願いを聴き、共感します。寅さんは、肩書きもお金もありませんが、相手のよい聴き手になるための条件 (心と時間の余裕)がたっぷりあります。そして相手の世界を理解する想像力も (ときどきはずれますが)豊かです。
ハマちゃん・・・100人に一つの顔でつながる
漫画 ・映画『釣りバカ日誌』の「ハマちゃん」(西田敏行さん)です。ハマちゃんは、つりが大好き、家族を愛し、仕事はマイペースというワー ク・ライフバランスをもっています。ハマちゃんは、「100人に対して一つの顔で接する人」なのです。ハマちゃんは、文化や価値観が違う人と対等に、タメロで関わる力をもっています。ハマちゃんは、相手が誰であろうと、相手に合わせて自分を変えるということはしませんが、同時に相手を無理やり自分の望む方向に変えようともしません。相手を、異なる文化をもっている人として尊重するのです。「みんな違って、みんないい」という考えを行動で示したいですね。
右京さん・・・多様なやり方でつながる
続いて、テレビドラマ『相棒』の 「右京さん」(水谷豊さん)です。右京さんは、自分の生き方をしっかりともち、多様な人と相棒になる力をもっています。右京さんは、「100人に対して多様なつながりがもてる」人です。警視庁特命係の右京さんは、正義を守ることを人生の核とする人です。特命係の「相棒」や鑑識係、警察庁の幹部、ときには被疑者とも「チーム」を組み、仲間の特技を活かしながら、難しい事件の謎を解いていくのです。チームの仲間から認められている、右京さんの問題解決能力は、相手や周りの環境を観察力にありそうです。
人とつながるには、寅さんのように相手に染まる努力をし、ハマちゃんのように相手とため口を楽しみ、右京さんのように相手の特技を活かせるとよいですね。(輿味がある人はYouTubeでTEDの講演『寅さん・ハマちゃん・右京さん』を見て下さい!)
人とつながるには、寅さんのように相手に染まる努力をし、ハマちゃんのように相手とため口を楽しみ、右京さんのように相手の特技を活かせるとよいですね。(輿味がある人はYouTubeでTEDの講演『寅さん・ハマちゃん・右京さん』を見て下さい!)
チームワークの心理学:「なりかけチーム」「にせチーム」「ほんものチーム」
なりかけチーム
みなさん、高校生活で、部活動や委員会活動、文化祭の準備などで、チームで取り組むことがよくありますね。「チーム」は、数人から10人が力を合わせやすいと言われていますが、多数のチームもあります。例えば文化祭実行委員会では、委員長・副委員長のもとに、セレモニー、ステージ、販売、食品、広報などの担当がいるでしょう。またステージ班のなかに数人のチームがいるかもしれません。いままで経験したチームで、よかったチーム、とても嫌だったチームがあるのではないでしょうか。チームワークの研究で、3種類のチームが提唱されています。
まず「なりかけチーム」です。 それぞれのメンバーが、互いの担当(例:販売)について情報交換をして、各自の持ち場でがんばるというチー ムです。 なりかけチームは、情報交換ができるので、チーム全体の様子が分かり、プラスになります。でも「情報を共有して、各自が行動する」ということだけでは、メンバーの総合力は高くなりません。「8人」のメンバーが 「各自1」の力をもっているとしたら、なりかけチームは「8」の力となるだけです。私たちのチームの多くは、なりかけチームと言われています。
まず「なりかけチーム」です。 それぞれのメンバーが、互いの担当(例:販売)について情報交換をして、各自の持ち場でがんばるというチー ムです。 なりかけチームは、情報交換ができるので、チーム全体の様子が分かり、プラスになります。でも「情報を共有して、各自が行動する」ということだけでは、メンバーの総合力は高くなりません。「8人」のメンバーが 「各自1」の力をもっているとしたら、なりかけチームは「8」の力となるだけです。私たちのチームの多くは、なりかけチームと言われています。
にせチーム
次の「にせチーム」には注意しましょう。にせチームでは、共同の日標がなく、各自が勝手に自己主張をします。にせチームの特徴のひとつが、失敗を「誰かの責任」にすることです。その結果、メンバーの意欲を低くし、チームの雰囲気を悪くします。犯人捜しをしないで、共同で失敗を受け入れ、対策をねることで、チームは次に進むことができます。また「自慢話」にも気をつけましょう。チームの行動の計画を立てるとき、だれかの経験を参考にすることがあります。でも、にせチームはどのような時でもメンバーの意欲と能力を下げますので、8人のメンバーでの総合力はかなり低くなります。
ほんものチーム
そして「ほんものチーム」は、共通の目標に向かって、力を合わせるチームです。互いの強みを理解し、互いに補いあうのです。メンバーの強みを早くみつけることが、チームの成功の鍵になります。ほんものチームでは、情報の共有だけでなく、行動を共有します。つまり複数のメンバーが共同で行うことを見つけ実行するのです。そしてチームとしての責任を重視します。ほんものチームの総合力は、8人のメンバーの合計の8よりはるかに大きくなります。なにより大切なことは、メンバーの小さな一歩(成功)を喜び合うことです。これがチームを継続するエネルギーになります。学校生活やアルバイトなどでチームで取り組むとき、ほんものチームをめざしたいですね。