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学長短信

2019/04/09

学長告辞(平成30年度卒業式) №13

  春めく3月のこの良き日、学部学生361名、大学院生22名の学位記授与式を迎えることができ、たいへんうれしく思います。
改めまして、卒業生・修了生の皆さん、本日はおめでとうございます。また、ご家族や関係者の皆様の、これまでの本学に対するご理解・ご協力に深く感謝するとともに、本日のご卒業・修了に対して心からお祝いを申し上げます。
 卒業生・修了生の門出を祝い、ご多用中にも関わらず、ご来賓の皆さまに、ご出席を賜りました。ご来賓の皆さまの前で、学位記授与式を行うことができること、教職員一同、大きな喜びでございます。誠に有り難うございます。
 
 さて、卒業生・修了生の皆さんは、本学において、それぞれの課程を修了し、晴れて、この日を迎えられました。
 入学式の時の期待と不安の入り交じった気持ちを、今でも忘れてはいないと思います。その入学式の日から今日まで、勉学に、研究に、サークルやクラブ活動、学園祭にと、教職員や友人たちとともに、学生生活を送ってきました。しかし、この学生生活は、決して自分一人の力だけで送れたわけではありません。とりわけご家族や友人たちの支えなしには、本日の卒業・修了の日を迎えることは出来なかったと思います。どうぞ、ご家族や友人たちに、感謝の気持ちを素直に伝えていただきたいと思います。
 今、皆さんが手にした卒業証書、修了証書は、本学からの保証書と言えるものです。「建学の『成徳の精神』を身につけ、それぞれの専門分野で、本学が求める知識と技能を修得し職業人として社会に貢献できる人」であるという証明書であります。皆さんは、そのレベルに達したということが認められ、晴れて卒業・修了となったのですから、『成徳の精神』を忘れずに、誇りを持って、今後の人生を歩んで行っていただきたいと思います。
 
さて、これからの人生ですが、人生には『山登り』と『川下り』の2つがあると言われます。まず『山登り』ですが、人生は『山登り』のように、1合目、2合目など、中間にいくつかの目標があり、それを一つ一つ達成していき、最終的には10合目なり頂上なりに達することができるように進んでいく面があります。それゆえ、人生には計画や目標が大切だと言われます。目標の無い者は、目標をもった人間にはかないません。長い年月、目標がなく、毎日をだらだらと過ごしていく人と、生活や仕事の目標を持ち、努力や工夫を重ねていく人との間には、最終的に大きな違いが生じることは目に見えています。また、ふだんから目標を持つことによって、多少の困難に出会っても、それを乗り越える先を見通すことで、耐えることができるようにもなります。
では、人生を計画的に進めていくために、どのような目標を持てばよいのでしょうか。最近、『結果目標』と『行動目標』の2つの目標の区別を聞くようになりました。『結果目標』とは、スポーツで言えば、今度の大会で優勝するとか、順位を上げるといった結果を重視した目標です。例えば、マラソンで一位になるという目標がそうですが、自分よりも速く走る人がいたら、その目標を達成できません。このように、『結果目標』は自分以外の原因によって達成できないことがあります。他方、『行動目標』とは、「健康のため毎日、20分歩く」とか「取得を目指す資格の勉強を毎日、30分する」など、自分でコントロールすることが可能な行動の目標設定です。『行動目標』は努力次第で、ほとんど達成することができます。私たちは、人生の目標というと、『結果目標』のことばかり考えがちですが、その『結果目標』を達成するために必要な行動を『行動目標』として設定しては、いかがでしょうか。たとえ、目標とする結果がダメであったとしても努力を続けたという目標は達成できるのですから、人生のモチベーションを失うことはありません。このように、普段の生活や仕事において『行動の目標』を自分に課しながら、人生の各自の目標の実現に向けて頑張っていただきたいと思います。

次に、人生には『川下り』もあります。穏やかな川の流れのように、人生がゆっくりと平和に気持ちよく過ぎていくかと思えば、急な流れのごとく、物事があれよあれよと急速に進んでいったりします。時には、乗っている船が岩場に衝突して大怪我をするように、人生においても想定外の災難や病気、事故・事件に遭遇することがあります。このように、良きにつけ悪しきにつけ、人生は計画通りに、いかないことが多々あり、運命のなりゆきに身を任せるほか道のないことがあります。
「思わぬ事故」の例として、星野富弘さんのことをお話してみます。
星野富弘さんは、群馬県内の大学を卒業し、地元の中学校の体育教師になりました。しかし教師になってわずか2ヶ月後、クラブ活動の指導中、模範演技で空中回転したときに誤って頭から転落し、脊髄の一番上の頸髄(ケイズイ)を損傷、それから今日に至るまで首から下の自由をまったく失ってしまいました。9年間におよぶ入院生活の間に、筆を口にくわえて言葉や絵を書き始め、それが徐々に評判を呼び、国内はもとより、ニューヨークやパリなど外国でも作品展を開くまでとなり、群馬県ならびに現在は熊本県に星野富弘美術館を開設しております。20数年ほどまえ、私は、この美術館と出会い、それ以来、星野富弘さんのフアンの一人になりました。たくさんの言葉や詩を発表していますが、彼の短い言葉を、いくつか紹介しましょう。
一つ目は、「神様がたった一度だけ  この腕を動かしてくださるとしたら 母の肩をたたかせてもらおう。」
2つ目。「私にできることは小さなこと。でも、それを感謝してできたら、きっと大きなことだ。」
3つ目。「わたしは傷を持っている。 でもその傷のところから、あなたのやさしさがしみてくる。」
4つ目。「いのちが一番大切だと思っていたころ、生きるのが苦(くる)しかった。いのちより大切なものがあると知った日、生きているのが嬉しかった。」
 どの言葉にも味わいがあり、私たちが人生を深く生きる上でのヒントを与えてくれています。
 このように大きな事故に遭遇しながらも、人生の立て直しを図った人は、それまでとは違う次元の新しい世界が切り開かれていくことがわかります。誰も信じられなくなるような、あるいは人のみならず神も仏も信じられなくなるようなことに、仮に出合ったとしても、人生を諦めたり、捨てたりすることは決してありません。また、失敗や挫折は人を賢くさせ鍛えると、よく言われます。失敗や挫折の原因を素直に認識し、「これは非常にいい経験だった。尊(とおと)い教訓になった」というところまで心を開く人は、その後、確実に進歩し成長していくと思います。
人生は『山登り』と 『川下り』。ふだんの生活や仕事に計画や目標を立て、あせらず地道に一歩一歩、進んでいくこと、そしてその上で想定外の出来事に出会っても、それを受け入れて、決して人生を諦めたりしないこと、この2つを皆さんの心に留めておいていただければ幸いと思います。   
結びに、卒業生・修了生の皆さんのこれからの生活が幸多いことを願い、私の告辞を終わります。
本日は、誠におめでとうございます。
      2019年3月18日                  東京成徳大学学長 新井邦二郎
                                                           



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