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学長短信

2017/04/04

平成29年度入学式学長告辞 №1

 新入生の皆さん、入学おめでとうございます。東京成徳大学を代表して、心よりお祝いを申し上げます。ご列席のご家族・関係者の方々にも、心からお慶びを申し上げます。また、ご来賓の皆様方には、ご臨席を賜り厚く御礼を申し上げます。

 本学は、その建学の精神として、「成徳」の名前の通り、徳を成す「有徳有為な人間の育成」を目指しています。よく「徳を積む」という言い方をします。それは「よいことを積み重ねていく」「人のためになることをたくさん行う」という意味と理解することができます。このようなことから「徳を成す人」とは、多くの人から信頼される行動を行う人、謙虚に感謝する気持ちを持つ人、仲間のことを思いやることのできるような人のことを指すと思います。
 「徳を成す人間の育成」という建学の精神を、教育理念として言い表したものが、「共生とコミュニケーション」です。「共生」とは、その字のとおり、共に生きるということ、すなわち、世の中には、いろいろな人が生きているが、それらの人を見下したり攻撃したりしないで、お互いの存在を認め合い、理解や共感を寄せ、ときには助け合いながら生きていくということです。
そして「コミュニケーション」とは、皆さんご存知のように言葉や表情・ゼスチャーなどを使い相互理解していくことであります。人は、相互理解する中でのみ人として成長することができ、かつ幸せな人生を送ることができます。学生生活を通して、この「共生の考え方」や「コミュニケーション力」をしっかりと身につけ、社会に出た後、周りの人から信用され、信頼される人間に、是非なってください。

皆さんは、童話作家の新美南吉(にいみ・なんきち)さんという方をご存知でしょうか。小学校の国語の教科書の『ごんきつね』を憶えている人もいると思います。その『ごんきつね』を書いた新美南吉が、『でんでんむしの悲しみ』というお話を作っています。こんなお話です。

 あるとき、一匹のでんでん虫が大変なことに気がつきます。
「わたしは今までうっかりしていたけれど、
 わたしの背中の殻の中には悲しみがいっぱい詰まっているではないか」と。
この悲しみをどうしたらよいのか、わからないでんでん虫は、お友達のでんでん虫を訪ねていきます。
「わたしは何という不幸せな者でしょう。
  わたしの背中の殻の中には悲しみがいっぱい詰まっているのです」
それを聞いたお友達のでんでん虫が言います。
「あなたばかりではありません。
わたしの背中にも悲しみはいっぱいです」
それじゃ仕方ないと思って、はじめのでんでん虫は、別のお友達のところへ行きます。すると、そのお友達も言います。
「あなたばかりじゃありません。わたしの背中にも悲しみはいっぱいです」
そこで、はじめのでんでん虫はまた別のお友達のところへ行きます。
こうして、お友達を順々に訪ねて行くのですが、どのお友達も同じことを言います。
そこで、とうとう はじめのでんでん虫は気がつきます。
「悲しみは誰でも持っている。わたしばかりではないのだ。
  わたしは わたしの悲しみをこらえていかなきゃならない」と。
そして、このときから、このでんでん虫は、もう嘆くのをやめたというお話です。

皆さんは、いまの『でんでんむしの悲しみ』のお話から、どんなことを感じとったでしょうか。
私たち人間は誰もが悲しみをもっていることに、改めて気づかされたのではないでしょうか。悲しみを持たない人は、いません。私たちは、往々にして、自分だけが悲しみを背負っているような思いに囚われます。自分だけが、なぜこんなにつらいのかと思う時も、正直あります。
しかし、ほかの人も、悲しみの中身は必ずしも同じではないけれど、確実に悲しみを背負って生きていることを、決して忘れないでください。人は、それぞれの悲しみに向き合いながら、その悲しみを人生の試練として生きていること、またその試練を乗り越えてゆくなかで人として成長したり、その人ならではの喜びや「生きていくことの意味」を得ることができることも分かっていただきたく思います。
 他面、自分と比べて、ほかの人の悲しみのほうが明らかに大きくて深刻な場合もあります。このような時、自分の悲しみを忘れて、大きくて深刻な悲しみを持つ人を見下したり軽蔑したりする心も生まれます。このような場合、現在の悲しみだけではなく、自分が過去に背負った悲しみを思い起こしたり、将来、自分が確実に出会うであろう悲しみを思いはかりて、他の人を見下したりしないで謙虚な気持ちで接することができるとよいですね。
人間はだれもが悲しみをもつもの。それぞれが背負っている悲しみを思いやり励まし合ったりするのが、「成徳」の精神の一つであることを、いつまでも忘れないで欲しいと思います。

最後になりますが、本日入学した皆さんが卒業・修了するまでの道のりは、必ずしも平坦なやさしい道ばかりではなく、幾多の困難の待ち受ける厳しい道もあるかもしれません。そうした困難に出会ったら、みんなで力を合わせて、乗り越えていきましょう。私たち教職員は、皆さんの学生生活を支えていきたいと思います。

                                                    平成29年4月3日
                                                    東京成徳大学学長  新井邦二郎

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