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2015/10/13

人といると居心地が悪い? ―対人不安の心理学―


 あなたは、授業で3分間スピーチをすることになりました。一人ひとり前に出て、みんなが見ている中でスピーチを行います。話す内容を考えて準備を行っている内に、あなたの順番になりました。席から立ち上がり、みんなの前に向かいます。前に立ち顔を上げると、クラスのみんなの目がこちらを見ています。・・・さて、あなたはどんな気持ち(感情)を感じたでしょう。
 
 心理学では、このような感情は「対人不安」と呼びます。簡単に説明すると、人との関係のなかで生じる不安のことです。先ほどの人前でのスピーチでの「あがり」や、顔見知り程度の人と会話で沈黙になった際に感じる「気まずさ」などがあります。上記の例では、あがった感じと同時に、心臓のドキドキや、顔が熱くなる感覚を想像した人も多いかもしれません。多かれ少なかれ、みなさんが経験したことがある感覚ではないでしょうか。

 対人不安について、生じやすい環境や相手、個人の特徴といった様々な観点から研究が行われてきました。詳しい内容は種々の書籍に譲るとして、ここでは対人不安に関係が深い個人特性について書きたいと思います。

 さて、人の中にあるどんな特性が、人前での緊張しやすさや、会話中に気まずさの感じやすさと関係しているのでしょうか。先行研究から大きく2つの特性が関係するのではないかと考えられています。

 一つの特性は、自分の身だしなみを念入りにチェックしたり、自分の容姿に気を配ったり、人前でのふるまい方に注意を払ったりする傾向が強さです。こういった特性の強い人は、人と一緒にいると、「自分を相手はどんな風に見て、考えているのだろう」と想像してしまい、不安・不快の感情が生じ、その場から逃げ出したくなると考えられています。(バスの対人不安理論) 
 
 もう一つの特性は、相手に自分のことをよく見せたいと考えている傾向が強さです。相手に自分をよく見せたくて、うまくいく可能性が疑わしいときに不安が起こると考えられています。スピーチをする前とかに、「堂々としてなめらかに話している自分」を想像したことはありませんか?そう振る舞える自信があるときはうまくいくかもしれませんが、自信があまりない場合には「うまくいかなかったときに相手からどう思われるのだろう」と心配になると思います。これはよい側面に限ったことではなく、「自分の欠点を隠して」それ以外の自分の印象を相手に見せようとするときにも同様に不安を感じます。(シュレンカーとリアリィの自己呈示理論)

 上記の2つの説を考慮に入れると、対人不安を軽減する2つの方法が思いつくのではないでしょうか。一つ目は、他者から見られている感覚を下げることです。実は、自分自身が意識するほど、他人はあなたを意識してはいないのかもしれません。二つ目は、理想(よく見せたい気持ち)を下げることです。高い理想を持っていると現実の自分とのギャップが大きく、ますます自信を失ってしまいます。理想を下げてみたり、見栄を張って自分を実力以上に見せようとしていないか、ありのままの自分を見せているかを自問してみましょう。

 中学生、高校生は、対人不安を感じやすい時期であると言われています。思春期に入って、人目が気になり、こうありたいといった理想が強くなったのではないでしょうか。 

 「対人不安は思春期にはよくあることだから問題ありません」と言いたいところですが、不安が強く苦しい場合や、「学校に行きづらい」や「外に出るのが怖い」のように生活に支障がでている場合には注意が必要です。そういったときには、両親といった身近な家族や親しい友人、学校の先生やスクールカウンセラーといった人に相談することをオススメします。誰かに理解されているという体験は大きな助けになります。悩みを隠そうとすればするほど、ドツボにはまって不安が増す傾向があるので、少しでも悩みを知って理解してくれる仲間を増やしましょう。


もっと勉強したい人は:
 丹野義彦・坂本真士 (2001).  自分のこころからよむ臨床心理学入門 東京大学出版会

(臨床心理学科 泉水紀彦)

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