研究活動の紹介:「においを感じる際の個人差」(小川 緑助教)
2024年12月16日
コロナ禍が過ぎ去り、はやくも数年が経ちました。コロナ禍で話題になったことは、ワクチン接種の問題やウイルスの変異など様々ありますが、コロナ罹患後の後遺症として嗅覚障害も話題になりました。視覚や聴覚などの五感のうち、「嗅覚」が果す役割はそれほど大きくないと思うかもしれません。しかし、コロナに罹り、嗅覚障害を発症してしまった方の多くは、食事を美味しく感じられなくなるなど生活の質の低下を感じています。失ってからその大切さに気づくとよく言われますが、嗅覚も人が生きる上で重要な役割を担っていたことをコロナ禍で再確認したように思います。
私はその「嗅覚」=「におい」を主に研究テーマとしています。人はなぜそのにおいを好き、もしくは嫌いと判断するのか、においを感じる際の個人差を明らかにしたいと考えています。一般的には不快に感じられるにおいであっても、自分にとってはとても良いにおいと感じることがあります。それは決して珍しいことではありません。私が以前に行った実験では、ガソリンのように感じられるにおいを一般的な不快臭として使用しましたが、とても良いにおいだと評価した実験参加者は少なくありませんでした。
これまでの先行研究や私自身が行ってきた研究から、においの好ましさは、嗅ぎ手がそれまでに、どのようなにおいを、どのくらいの頻度で、どのような文脈で(嫌なもの、もしくは好きなものとともに)嗅いだかという嗅覚経験の影響を大きく受けることがわかっています。しかし、同じ経験をしてきたと考えられる者(例えば、兄弟)でもにおいの好みやにおいを感じる強さなどが全く同じにはなりません。おそらく、もともとの性格や感覚から得た情報を脳内で処理する際の特徴が異なるためだと考えています。
においを感じる際の個人差がわかることで、においに関連した困りごと(嗅覚障害だけでなく、ごく弱いにおいを強く感じてしまう嗅覚過敏など)を解消する糸口になると考えています。現在は特に、嗅覚過敏について力をいれて研究を進めたいと考えています。
においって面白いなと少しでも感じた方は、ぜひ、自分の鼻をくんくんとして、自分のまわりのにおいに注意を向けてみてください。これまでとは違った世界がみえるかもしれません。
(臨床心理学科)
コロナ禍が過ぎ去り、はやくも数年が経ちました。コロナ禍で話題になったことは、ワクチン接種の問題やウイルスの変異など様々ありますが、コロナ罹患後の後遺症として嗅覚障害も話題になりました。視覚や聴覚などの五感のうち、「嗅覚」が果す役割はそれほど大きくないと思うかもしれません。しかし、コロナに罹り、嗅覚障害を発症してしまった方の多くは、食事を美味しく感じられなくなるなど生活の質の低下を感じています。失ってからその大切さに気づくとよく言われますが、嗅覚も人が生きる上で重要な役割を担っていたことをコロナ禍で再確認したように思います。
私はその「嗅覚」=「におい」を主に研究テーマとしています。人はなぜそのにおいを好き、もしくは嫌いと判断するのか、においを感じる際の個人差を明らかにしたいと考えています。一般的には不快に感じられるにおいであっても、自分にとってはとても良いにおいと感じることがあります。それは決して珍しいことではありません。私が以前に行った実験では、ガソリンのように感じられるにおいを一般的な不快臭として使用しましたが、とても良いにおいだと評価した実験参加者は少なくありませんでした。
これまでの先行研究や私自身が行ってきた研究から、においの好ましさは、嗅ぎ手がそれまでに、どのようなにおいを、どのくらいの頻度で、どのような文脈で(嫌なもの、もしくは好きなものとともに)嗅いだかという嗅覚経験の影響を大きく受けることがわかっています。しかし、同じ経験をしてきたと考えられる者(例えば、兄弟)でもにおいの好みやにおいを感じる強さなどが全く同じにはなりません。おそらく、もともとの性格や感覚から得た情報を脳内で処理する際の特徴が異なるためだと考えています。
においを感じる際の個人差がわかることで、においに関連した困りごと(嗅覚障害だけでなく、ごく弱いにおいを強く感じてしまう嗅覚過敏など)を解消する糸口になると考えています。現在は特に、嗅覚過敏について力をいれて研究を進めたいと考えています。
においって面白いなと少しでも感じた方は、ぜひ、自分の鼻をくんくんとして、自分のまわりのにおいに注意を向けてみてください。これまでとは違った世界がみえるかもしれません。
(臨床心理学科)