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お知らせ

2016/12/07

一般公開講座のご報告

共通領域部、教職担当の堤です。
色づいた葉もずいぶん落ち、本格的な冬を感じるようになりました。私は油断して少し体調を崩してしまいました。みなさんはじゅうぶん気をつけてください。

さて、先日2016年10月30日、八千代キャンパスは、文化祭(翠樟祭)で大いに盛り上がりました。そんななか、同日AVホールでは一般公開講座が開催され、私は午後の部に、「『いじめ』とはどのような問題か?」というタイトルで講師を務めました。ご参加くださった方々、まことにありがとうございました。大変遅くなりましたが、その様子をご報告いたします。


今回の講座では、特に教育社会学を中心とした研究の蓄積をもとに、現代日本の大きな社会問題のひとつである「いじめ」を扱いました。
主題としたのは、講座タイトル通り、「『いじめ』とはどのような問題か?」という問いです。

まず、「いじめ」を具体的に考えていただくために、「これまで『いじめ』を(どのような立場であれ)ご自身で経験してきましたか?」、「『いじめ』を受けて、死にたいと思ったことはありましたか?」、「『いじめ』の原因は何だと思いますか?」などの問いかけから講座を始めました。ご自身の経験や考え方に関するセンシティブな事柄にもかかわらず、私の問いかけにお答えくださった方々に感謝申し上げます。

その後、これまで日本で「いじめ」が大きく社会問題化した諸事件を振り返るとともに、「いじめ」の認知件数の推移のグラフを読み解きました。また、「いじめ」の定義の変遷、諸外国と日本における「いじめ」の比較、現在の日本における法的位置づけなどを確認した上で、子どもたちの意識変化や錯綜する原因論を概観しました。そして、日本における学級の重要性を歴史的に振り返り、スクールカースト、友人関係の変化、「いじめ自殺」問題に至るまでを駆け足で説明しました。

最終的に、上記の問いに対する本講座の答えは、「『いじめ』とは、歴史的に形作られてきた日本の学校教育の構造そのものに深く根付くゆえに、それほど単純に解決策が見つからない問題である」というものです。このもったいぶった答えを導くことで私が意図していたのは、「いじめ」の問題はもちろん、それをきっかけに日本の学校教育そのものをより大きく考え直す手がかりを示すことでした。


オーディエンスのみなさまには、簡単なアンケートにご回答いただきました。
結果、「いじめと日本の学校教育の関係について理解が深まりましたか」という質問に、92%の方が「理解が深まった」とご回答くださいました注1
また、「今後の日本の学校教育のあり方を考える上で参考になりましたか」という質問には、91%の方が「参考になった」とお答えくださいました注2

「どうすれば『いじめ』がなくなるのか?」「『いじめ』が起きたときにどうすればいいか?」といった、切迫した疑問に歯切れよく解答を与える内容でなかったにもかかわらず、私の狙いをご理解いただき大変嬉しく思います。自由記述欄では、以下のようなお言葉をいただき、大変励みになりました。まことにありがとうございました。

【具体的な感想(抜粋)】
・とても新鮮な内容でした。(50代)
・だんだん確信に迫ってきて、興味深かったです。(50代)
・あたりまえのように受けていた「学級」の教育が、いじめを生む原因にもなっていたということが、目からウロコでした。(40代)
・とにかく今、親であり生徒である人たちは大変だ!! そんな中で、少々、明をみてもよいのかと思える。ありがとうございました。パッションを感じ嬉しかったです。(60代)
・いじめの背景や歴史が理解できたが、解決は私達個々(大人)に投げかけられ、責任を痛感しました。子供達に、未来の社会を明るく、たくましく生きるよう育ってもらうために、自問自答しながら、周りにいる子供(孫達)に接していきたいと思います。(70代)


今回の講座では、目一杯の内容を90分に詰め込みました。私が担当している教職の授業では、8回くらいの時間をかけてじっくり扱う内容を1回に圧縮したものです。そのぶん、オーディエンスのみなさまには大きな負担を強いるものでしたが、アンケートでは、53%の方が「わかりやすかった」、32%の方が「ふつう」とご回答くださいました注3。みなさまが真剣に耳を傾けてくださったおかげです。心より感謝申し上げます。

ただ、「難しかった」とお答えになった方が16%いらっしゃり、内容についても以下のような率直なお言葉を頂戴しました。力不足を痛感しております。今後の課題として、さらに工夫して参ります。

【具体的な感想(抜粋)】
・教育、学校から離れて暮らしているせいか、個々の説明に違和感がありました。そのせいか全体的に首肯感はあまりないという感想です。専門家間で自明のことが、一般人にとってはそうとは限らないのではないかと思います。(60代)
・現在の学校教育の何が問題なのか、どう変えていくべきなのか、もっと具体的に提言していただきたかった。現場の生々しい現実が見えてこない。(60代)


教職課程では、本講座のように、学校教育、そして学校教育その置かれた日本社会のありようを広く反省的に捉えるために、多くの課題文献を読み、考えてもらいます。そして同時に、さまざまな問題に対し、教員として(あるいは子どもにかかわる親、市民として)具体的にどのような対応が可能であるのかを学び、教員になるための総合的な訓練を行います。教員免許を取得し先生になることは容易いことではありませんが、少しずつ、着実に準備を進めてほしいと思います。


なお、「いじめ」に関しては、さまざまな書籍が出版されています。本講座の内容に関心をお持ちの方で、何から手をつければよいかお悩みの方は、以下のような入門書から目を通してみることをおすすめします。

・加野芳正  『なぜ、人は平気で「いじめ」をするのか?――透明な暴力と向き合うために』 日本図書センター (2011年)
・森田洋司  『いじめとは何か――教室の問題、社会の問題』 中央公論新社(2010年)
・内藤朝雄  『いじめの構造――なぜ人が怪物になるのか』講談社(2009年)
・鈴木翔  『教室内(スクール)カースト』 光文社(2012年)


【注】
1:「1.とても理解が深まった/2.どちらかといえば理解が深まった/3.あまり理解が深まらなかった/4.まったく理解が深まらなかった」の4件法で尋ね、1と2を合算し「理解が深まった」とした。
2:「1.とても参考になった/2.どちらかといえば参考になった/3.あまり参考にならなかった/4.まったく参考にならなかった」の4件法で尋ね、1と2を合算し「参考になった」とした。 
3:「1.わかりやすかった/2.ふつう/3.難しかった」の3つの選択肢で尋ねている。 

(堤孝晃)

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