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お知らせ

2016/10/22

日本災害復興学会に参加してきました

2016年10月1日に、石巻専修大学で行われた日本災害復興学会に参加してきました。学会HPリンク

私は、「東日本大震災と復興に関する被災者調査データの二次分析と分析方法の検討」という分科会で、「テキストマイニングから見る被災者調査」という発表を行いました。仮設住宅に住む被災者のインタビューデータを、テキストマイニングの手法を用いて分析する研究です。まだまだ途中経過の発表でしたが、多くの課題をご指摘いただく貴重な機会となりました。まことにありがとうございました。


私はこれまで、震災や復興をテーマに研究してきたわけではありません。その私がこの研究に取り組んでいるのは、東京大学社会科学研究所の「二次分析研究会」というプロジェクトに参加しているためです。


社会調査は通常、調査実施者が何らかの目的をもってデータを収集し分析を行います。ここで集められたデータを「一次データ」と呼び、調査実施者が行う分析を「一次分析」と呼びます。これに対し「二次分析」というのは、調査実施者が集めた「一次データ」を、調査実施者とは異なる分析者が分析することを指します。

二次分析は、調査者が調査を実施する様々なコストをなくし、同時に被調査者が調査を受ける負担も軽減します。また、調査実施者とは異なる二次分析者が分析を行うことは、多様な観点から貴重な調査データがもつ潜在的な可能性を引き出すことにもつながります。例えば、実際に調査を行うことが難しい外国の研究者が、日本で実施された調査を分析することで、国際比較の観点が開かれることになります。

そして、社会調査のデータは、その時点での社会のあり方を鮮明に記録するものです。保存の方法を間違わなければ、10年後、20年後、あるいは100年後や1000年後にも、いまの私たちの社会のあり方を伝えることができます。実際に、何十年も前に実施された調査を復元することで、当時の日本のあり方を捉えなおそうとするプロジェクトも進んでいます。

〈参考〉
相澤真一・小山裕・鄭佳月,2013,「社会調査データの復元と計量歴史社会学の可能性」『ソシオロゴス』37,65-89.
野上元・小林多寿子編,2015,『歴史と向きあう社会学――資料・表象・経験』ミネルヴァ書房.
相澤真一・土屋敦ほか著,2016,『子どもと貧困の戦後史』青弓社.

つまりこれは、社会調査データを一種の公共物とみなし、その価値を、時空を超えて広く共有しようという試みでもあります。


こうした目的のために、調査データを保管するのが、データアーカイブです。日本では、東京大学社会科学研究所のSSJDA、立教大学のRUDA、札幌学院大学のSORD、労働政策研究・研修機構のJILPTデータ・アーカイブなどが有名です。海外でも、アメリカのICPSR、イギリスのUKDA 、ドイツのGESIS、韓国のKOSSDAなど広く展開されており、一般的には、質問紙調査などの量的調査データが膨大にアーカイブされています。

さらに二次分析やデータアーカイブについて知りたい方は、以下を参照してください。
佐藤博樹・池田謙一・石田浩編,2000,『社会調査の公開データ――2次分析への招待』東京大学出版会.



今回の日本災害復興学会の研究発表は、震災被災者に対するインタビューデータを二次分析する試みです。インタビューデータは、量的データとは異なる質的データであり、これまで日本で実施されてきた二次分析とは異なる難しさを抱えています。また、必ずしも被災地のことを専門に研究してきた専門家ではない分析者が、データを分析しているという困難もあります。学会での討論の場では、深い理解を持たない専門家では、データを正しく分析することは難しいという厳しいご意見もいただきました。その点について、反論できる余地は一切ありません。

しかし社会調査データ、とりわけ震災に関するデータを公共物として共有可能なものにするシステムを作ることは極めて重要です。なぜなら、大震災は滅多に起きません(し、起きては困るものです)が、しかしいつか必ずまた起きてしまうからです(実際に、熊本震災も起きてしまいました)。何年後、何十年後に起きるかもわからないそのときに備えるためにも、起きてしまった震災で集められたデータは、他の社会調査データにも増して貴重なものとなります。

上記のプロジェクトは、このための足がかりを得る試みでもあります。難しい課題ではありますが、自身もさらに勉強を進めながら、また専門の方々のご協力をいただきながら取り組んでいきます。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

(堤孝晃)

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